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思考社

いんふるえんす我丞の情報発信基地。

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2024/05/10 (Fri)

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書類の裏の密かな手紙

2006/09/10 (Sun)


表の報告なんかより、こちらを優先したいくらいですよ。


 あの情報をくれた奴は不安だと言っていました。紫族の中でも異端に近い奴で、俺の従兄弟で、蒼って名前なんですが、常日頃は臆面も無く化け物と慣れ合うあいつが渦の気に当てられて不安がってるんですよ。

どれほどの人間が俺達が作り始めた渦の中で不安を感じ、不幸だとつぶやくのかは計り知れません。
でも俺は、後世にまで残るかもしれない災いになるかもしれない事を、この砂漠に渦を起こして、片付けない事には気が済まないんです。たとえそれが一族の意思と受け継ぎに反する事でも。
 ひょっとしたら紫族に生まれなくても俺は、今回の国の気脈を総滅させかねない事業に関わることになっていたんじゃないかと。殺鬼になってしまった俺の夢見の才は怪しいもんですが、直感だけから言っても、灰色毛騎獣の出生率並には当たってるはずですよ。

そして最後に、どこかの誰かが渦を起こしていかなくては、この世界の明日すら成り立たない事を知っています。
だから俺は紫族暗殺鬼としてではなく、俺にしか出来ない事として、俺の立場から曲変する世界の一面を成すために、

仕事相手として、ハルベルヌ国王、あなたを選びます。



紫族の暗殺鬼 九十三代ホムラ
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時系列++ 初めから零

2006/08/24 (Thu)


「はい、通信変わりました・・・・・・どちらさま?」

「僕が旅に出たときからあの星がずっとあの位置にあったように、君の座標は全く変わっていない」

「・・・・・・・ジィナ?」

「だけど僕の居場所だけは流転して、」

「ちょっと、ジィナなんでしょ。言いたい事いっぱいあるのよ私にも話をさせなさ」

「星の座標はホシの中」

「何わけの分からない事喋ってるのよ。いつものあなたらしくも無いわトマト投げるわよ」

「帰れない」

「え?」

「・・・・・・・・・・かも」

「なんて、言ったの、今」

「僕はもう君に会えないって」

「言うな前言撤回しなさい今すぐ」

「それはちょっと」

「馬鹿」

「・・・・・・・・・理由も聞いてくれない?」

「それぐらいは寛大に聞いてあげるわよ、ええいいですとも聞いてあげましょう時間無いんでしょ簡潔にどーぞ?」

「死ぬから」

「嘘吐き」

「ホントに最後の御願いだから信じてくれ」

「嫌よ聞きたくないから受信機置いちゃうわよ」

「・・・その言葉、最期に聞くには辛過ぎ」

「じゃあ、どんな言葉がいいのよ我侭」

「いつもみたく」

「・・・・・・両手と」

「額をあわせて」

「「旅する君のもとに星の庇護を」」


「・・・ありがとう」

「いつもの事でしょ。いってらっしゃい」

時系列++ 愛妻家印

2006/08/05 (Sat)

ジィナンシールは夕焼けを見つめていた。
窓にくっつけて置かれたデスクには色々の赤に染まるディスプレイが並んでいて、打ち込み専用のボードの上に、危険な事に中身入りのマグカップがのっかっている。
窓の方を向いたまま、元来色素の少ない手がカップを掴んで口へと運ぶ。
「・・・・・・苦い」
贈答品のコーヒーは彼の口に合わなかったらしい。けれど、眉根を寄せたまま二口、三口とすするあたりが彼の性分なのかもしれない。

やっと底が見えてきた頃、ドアの一枚向こうでぺたぺたと軽い音がした。間を置いて、ノックの音。
「ジィ、勝手に入るよ」
明かりの薄い部屋に入ってきたのは女性体のアニマトロイズだった。
研究衣のノースリーヴから出た腕はひょろりとして、一見そこらにいる陸人と間違えそうになるが、登録されている限りでは彼女は紅鼠系のアニマだ。
右脇に大量の紙束を抱えて、左手で小ぶりのボトルを二本持っていた。両手塞がりでどうやってドアノブを回したのだろうか。
「またシュンさんのお使いか。たまには若いのを寄越してくれればいいのに」
お前は意地っ張りで使い勝手が悪い、そう言ってジィナンシールは来客を迎えた。
窓際を離れて机上のパネルに指示を打ち込む。2拍と置かずに部屋中の明かりが点灯し、中央に置かれたテーブルとソファの辺りだけに明かりが残った。
ついでに棚からファイルを一冊取ってテーブルへ向かう。


「で、どういうお小言とどういうお使いを持って来てくれたんだ、セリクハル?」
薄い銅色の前髪の下で、同じ色をしたジィナンシールの瞳がはやくも面倒くさいと語っていた。
「やぁだセリクハルなんて。セリでいいってのに」
そうかえす客人は自分で持ってきた瓶入りの白汰酒の栓を開け、部屋の主を無視して酒をあおりはじめた。白汰酒は沿岸部の特産品で、度数はそんなに高くない。
だが塩分とも何ともつかない独特の香があって、地元の人でさえ好き嫌いの分かれる所謂ゲテモノ酒である。

そんな奇矯な酒から漂う塩っぽい匂いに鼻までしわを寄せて、ジィナンシールは卓上に放り出された資料をめくり始めた。
きつくなる酒の匂いが、資料の内容や所狭しとくっつけられたメモの要求する事とともに彼の機嫌を悪化させる。
メモの大半は調査請求、しかも正規の仕事からだいぶ外れたそれらは
残業のレヴェルを超えて徹夜労働ものだった。
「これ全部今日中にやれってシュンさんが」
酒の合間にセリクハルがぶはっと息をつく。据わりかけた目が天井のひび割れを睨んでいる。どうやら乗り気でないのはお互い様らしい。

「あの局長、僕が愛妻家なのを知っててこういう事をやってんのか」
「一衛期に4回も放浪する研究者は愛妻家とは言わないと思いまーす」
分厚い資料をめくる手が、一瞬止まった。
「公の基本休暇を全部棒に振る公僕は家庭人とは無縁でーす」
今度は無意味にばらばらとめくり始めた。
「家庭外に荷物が殆どあるなんて一般人でも無いでーす」
一度あさっての方向と、机上の写真立てを眺めて、
ため息が出た。
「・・・・・・・・・・・・・・僕が望んでそうしてる訳じゃない」
じゃあ何でこんなことしてるのかと言いたげな視線が突き刺さる。テーブルの向こうで2本目の酒が封切られた。解説相手が酒飲みでは分が悪い。決着が付かない。
ふと、妙なメモが視界に入った。
他のものに比べて全体が褪色して、読みづらいどころか一種の文様と化している。
だがそれを見た瞬間、ジィナンシールの目に険が宿った。
「セリ、仕事するぞ。続き部屋の資料庫から南諸島の植物系と地質系の全資料、それから」
「地下秘匿資料庫の鍵、シュンさんに気脈連絡の準備」
一つ頷いて研究者の彼は目の前にある資料を丹念に見直す。片手で額を押さえて文書に没入していく姿に、愛妻家云々の様は微塵も無かった。

同僚の紅鼠系アニマは振り返ってにやりと笑う。
「この仕事、休暇前に終われたら愛妻家の認定あげるよ、って」
次の休暇まで、あと4晩と半分。はっとして上げた顔は、閉まりゆく扉に遮られた。
シュンさんが言ってたー。たー。たー。
語尾が長く尾を引いて、残響が足音にまみれた。


短くため息をつきかけて、止めた。
机上の写真、日に焼けて色の薄れたそれに困ったように笑いかける。
「仕事、終わったら会いに行くな」

『サイド』

2006/08/05 (Sat)

帝都星見台檻ノ月特別講義
第八回 『魅せる者』 より抜粋




今日はまぁ、突拍子も無い話を一つ。
とは言っても僕はこんな事をに日常的に思考するわけだが。


世界には、自分が憬れて止まぬものや、
どうしようもなく惹かれるもの、
理由もわからずに魅せられてしまうものが、確実に存在する。

個々によりその度合、対象は違う。
それは人であったり、物であったり、
あるいはソレを使って切り取られた世界であったりする。
自分自身の意外性、なんて事もあるのかもしれない。

では、僕らはただ魅せられる側に立つだけなのか。
彼等からたなびく不思議な感覚に揺らされているだけなのか。
否。
魅せるモノに対して、僕らの心や身体は何らかの形で些細な干渉をしようとしている。
物質的な干渉、精神的な干渉、或はそのモノの運命に関わる干渉。その方法たるや膨大な数を持ち、程度やその深さもケースバイケースだ。
魅せる者への何らかの干渉、それによって僕らの《魅せる者への欲求》は一時的に抑えられ、その状態が恒常的に続いてゆくことによって各方面への被害が最小限に留まっているとも言えよう。

だがしかし、《魅せる者への欲求》が何一つとして叶えられないケースが、哀しいながらこの世には存在する。例えば僕らの主たる研究素材、星や流恒星などがそうだ。
大きな星見筒や天球儀に向かう度、僕ら星見の者達は数々の星を身近に感じ、掌中に収め、自分だけが此の星と対話しているかのような錯覚に陥る。そうして飽くこと無く星を見上げているうちに、幾つかの発見をしたり、今までの事象との違いを見つけたりする訳だが。

まさにその時、星に向けられていた眼差しが研究録とを行き来するその間、星を手放す瞬間に、君達も何かを感じた事があるのではないかな。
虚空の喪失感、炯々とした星と紙に記された符号との落差。
言い様は種々あるかもしれないが、自分の願って止まない対象に逸れられ、突っぱねられたようなその感覚こそが《魅せる者への欲求》が満たされなかった時に生まれるものなのだ。

その感覚を、どうしようもないものとして放って置く者も少なくない。
だが、それで良いのだろうか。本当にその事は君の手も足も出ない領域の事だったのだろうか。温存して鑑賞するのみに止め、干渉する事無く、そっとしておくべきだったのだろうか。

僕には、はっきりと首肯してしまう事はできない。それは君達自身が、生きている限りその身に問うこと以外の何物によっても解決されはしない。

藍色の丹で符送された手紙

2006/05/05 (Fri)

記し始めは紅玉と 篩う玉串風に薙ぐ
対価代価を取らすとは たきそよぐ枝や藍稲の蓬

アテビトの名は第93代目ホムラ
見つけ出だすは希代の刃

伝えしことは是より後に。




手紙、定期連絡として符送させてもらう。
先に私事を。



桜子様より、俺にも命が下った。
反抗分子と政府との間諜役だ。

従兄弟のお前が十で命を受けたのを見たあの時、正直とても羨ましかった。
国中の秘所に立ち入り放題、伝授奥義の類は全て手に入るし、
いくらでも門と夢見人を使えて、仮宮を与えられて、
桜子様にも直接お会いできて。

やってる仕事が暗殺だと知ってからも、然して変わらなかったさ。
紫族に居る以上は国の密命を帯びなきゃ認められないし、飯を摂るのも生物を殺すのも似たようなものだ。
だが、俺にとって桜子様は別格だ。あの方に会える、本当はただそれだけが妬ましかったのかもしれない。
扉主だからではなくて、俺が、全てで慕っているから。


そしてあの方は俺に、自分を忘れて暗の跋扈する世に出て行けと、命を下したんだ。
俺では、あの方の隣にはいられないのだそうだ。


不安なんだ。
ずっと、変わらなかった桜子様までもが、変わってしまう気がしてならない。
言い表しにくい事ではある。だが、逆雨が全てを落とし流していくような感触があって、なぁ、お前なら何か知っているんじゃないか?
国王にも面識ぐらいあるだろう、研究所や流見台にも出入りがあるだろう?俺はこれから、何に巻き込まれて、一体何に流されていくんだ?




是より後に定時を。

叔父兄殿は相変わらず漏明宮と帝都との行き来で稼いでいる。半期は優に超えるだろうな。主に新都市方面の原石、隷都の硝石。
レステク殿は本家宮に逗留。通商許可が下り次第大陸まで行く予定。こちらも原料石。
お前の伯母上は研究機関廻りから未だ帰っていらっしゃらない。
他はみな通常どおり動いている。

沙漠境界付近で地価のレートがあがっている。だが取り引きをしている者がトーレイとも震とも判別がつかない。



近いうちに、試験を受けるために帝都まで行く予定がある。
都合がついたら本宮2階宛てに返事をくれ。




伝えし言は是より前に

振り柄の持ち手は夜水底が色
記し終わりは水もて封ず。

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HN:
我丞
性別:
非公開
職業:
人の話きく人
自己紹介:
人間27年生。
セクマイ道7年生くらい?
心理臨床とセクマイと発達凸凹を応援するよ!

ここにあることばと存在が、私のプロダクト。
見て、わからないことは聞いて。

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