思考社
いんふるえんす我丞の情報発信基地。
夕暮れリウム-4-
「おや、何だね若いもんが」
こんなとこに興味があるの、と
向かいのおばさんが目を見張る
水たばこをぷうと吐き出し、煙が広がる
「いけないですか?
何事も後学のためと言うじゃないですか」
「まぁ、見るだけはいいけどねぇ」
生気ない顔した人の列を二人して
眺め、ながめ。
おばさんはぷつりとつぶやいた。
「あすこに用がある人はねぇ」
また一人、色なし顔がテントに入る
「まーっすぐそこだけ指して行くし、
他なんか目もくれない」
「で、どうするかっていうとね、
子供時代を買い取ってもらうの。
きっと、嫌な思い出か、よほど
忘れたい事があるのねぇ。
どうしようもなくなって、行くのねぇ」
ぱぁ、と口を開いて出てくる
煙は、むらさきのジョーゼット
そのむこうでまた一人、
小さなテントに消えていく。
前のお客は、出てこない。
こんなとこに興味があるの、と
向かいのおばさんが目を見張る
水たばこをぷうと吐き出し、煙が広がる
「いけないですか?
何事も後学のためと言うじゃないですか」
「まぁ、見るだけはいいけどねぇ」
生気ない顔した人の列を二人して
眺め、ながめ。
おばさんはぷつりとつぶやいた。
「あすこに用がある人はねぇ」
また一人、色なし顔がテントに入る
「まーっすぐそこだけ指して行くし、
他なんか目もくれない」
「で、どうするかっていうとね、
子供時代を買い取ってもらうの。
きっと、嫌な思い出か、よほど
忘れたい事があるのねぇ。
どうしようもなくなって、行くのねぇ」
ぱぁ、と口を開いて出てくる
煙は、むらさきのジョーゼット
そのむこうでまた一人、
小さなテントに消えていく。
前のお客は、出てこない。
夕暮れリウム-3-
「ウチのりんごはただじゃないよ」
「知ってるよ、それでいくらだい?」
そうじゃあないと首を振る
「ただのりんごじゃあない、と言ってる」
声を低め、あたりをきょろきょろ
こっちへ来いと手招きで
耳と口とを近づける
「“世界で一番の幸せ”が詰まってんのさ」
・・・・・・何だいそれ、うさんくさいね
「それで結局いくらなんだい」
「お客さん、ほんとに買いたいのかい?」
高くつくよと、店主はにやつく
幸せのりんご一つ、ぽおんと放り投げて
「いやいや、食べたやつしかわかんねえ
こいつはモノホンの“黄金のりんご”さ」
「誰がどうなったと言うわけにゃいかないが
一口かじれば、この世の春
二口かじれば、あの丸いお日さんに並ぶくれぇ
三口かじれば・・・な?もぉ、お解かりで」
しかめっつらが、きんの表につるりと伸びる
「あ、まぁだ疑ってら
メッキなんかしてねぇって
見かけだけじゃあわからんもんよ
一口くってみねぇことには」
「知ってるよ、それでいくらだい?」
そうじゃあないと首を振る
「ただのりんごじゃあない、と言ってる」
声を低め、あたりをきょろきょろ
こっちへ来いと手招きで
耳と口とを近づける
「“世界で一番の幸せ”が詰まってんのさ」
・・・・・・何だいそれ、うさんくさいね
「それで結局いくらなんだい」
「お客さん、ほんとに買いたいのかい?」
高くつくよと、店主はにやつく
幸せのりんご一つ、ぽおんと放り投げて
「いやいや、食べたやつしかわかんねえ
こいつはモノホンの“黄金のりんご”さ」
「誰がどうなったと言うわけにゃいかないが
一口かじれば、この世の春
二口かじれば、あの丸いお日さんに並ぶくれぇ
三口かじれば・・・な?もぉ、お解かりで」
しかめっつらが、きんの表につるりと伸びる
「あ、まぁだ疑ってら
メッキなんかしてねぇって
見かけだけじゃあわからんもんよ
一口くってみねぇことには」
夕暮れリウム-2-
こなごなに、ぱりんと割って
「あの仮面、何からできてるか知っているかい?」
「ううん」
「前にきたお客さんから、
その人に必要ない仮面をひっぺがすのさ。
そうしてはがしたものを、炉にかけて、
とかして、まだ熱くて形のないうちに
これとまぜて漂泊してしまう」
「漂白?」
「そう、色を抜く。
そうすれば、
もとは誰が持っていたものか、
どんな“人”だったのか、わからなくなる」
「そうしたものをね、
こねて、こねて、
叩いて、伸ばして。
ようやっと大元ができるのさ」
「大変なんだね」
「まぁね。でもここまでくれば、あとは早い」
たぷたぷと揺れる水火の中から
仮面屋は、一杯柄杓ですくいとって言った。
「ただ、形づくるだけさ」
「あの仮面、何からできてるか知っているかい?」
「ううん」
「前にきたお客さんから、
その人に必要ない仮面をひっぺがすのさ。
そうしてはがしたものを、炉にかけて、
とかして、まだ熱くて形のないうちに
これとまぜて漂泊してしまう」
「漂白?」
「そう、色を抜く。
そうすれば、
もとは誰が持っていたものか、
どんな“人”だったのか、わからなくなる」
「そうしたものをね、
こねて、こねて、
叩いて、伸ばして。
ようやっと大元ができるのさ」
「大変なんだね」
「まぁね。でもここまでくれば、あとは早い」
たぷたぷと揺れる水火の中から
仮面屋は、一杯柄杓ですくいとって言った。
「ただ、形づくるだけさ」
ブログ内検索
暦
03 | 2025/04 | 05 |
S | M | T | W | T | F | S |
---|---|---|---|---|---|---|
1 | 2 | 3 | 4 | 5 | ||
6 | 7 | 8 | 9 | 10 | 11 | 12 |
13 | 14 | 15 | 16 | 17 | 18 | 19 |
20 | 21 | 22 | 23 | 24 | 25 | 26 |
27 | 28 | 29 | 30 |
己
HN:
我丞
性別:
非公開
職業:
人の話きく人
自己紹介:
人間27年生。
セクマイ道7年生くらい?
心理臨床とセクマイと発達凸凹を応援するよ!
ここにあることばと存在が、私のプロダクト。
見て、わからないことは聞いて。
セクマイ道7年生くらい?
心理臨床とセクマイと発達凸凹を応援するよ!
ここにあることばと存在が、私のプロダクト。
見て、わからないことは聞いて。
項
新
(10/30)
(08/02)
(07/28)
(07/26)
(04/16)
カウンター
Tamariba