思考社
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帝都ヴィルダリアにて -見つけられた鳥の話-
王立学院総本山の単科授業を5周期ほど取っている。
学院授業でベルヌ系植物の実験を行った。その時に、自宅栽培の鉢で咲いた純ベルヌ系の白い花が風喰で落ちたのが栞になって辞書にはさまれていたのを思い出したので、授業中に同様の処置をしておいた。
ここからは僕の勝手な放課後研究になる。
学院総本山の良い所は、職員の認可証一つでどの試薬品も使い放題にしてくれるところだ。地方に居たんじゃこんな贅沢はできない。富と権力の集まる王都だからこそ、渡り鳥に餌でもくれるような感覚で物資をばらまけるのだ。たとえそれが広告のパーツであるにしろ、田舎くんだりからのこのこやってきた苦学生にはありがたい事だったし、実際タダ飯と薬品臭い散財が目的で来てる学徒も相当いるんじゃないかと思う。
青緑色の反応剤を広口瓶から器へと流し入れ、さらにそこからピペットで試験管に取り分ける。授業で煮沸処置をして中に入れてある花弁と花台が浮いて、白く青く周りを映した泡と共に沈んだ。
少しだけどろりとした感のある液体はそれ自体が面倒なシロモノで、数分も大気にさらせば空気を取り込んでたちまち泡となって逆に空気中に分解されていってしまう。必要な着色剤を大急ぎで垂らし、速攻で栓をする。
五分も待てば古ベルヌ系に特有な物質だけが青く着色されているはずだ。
ベルヌ系植物には大別すると種類あって、現代のベルヌ系植物は『新ベルヌ体系植物』といって、今の位置が正式に王都とされた時あたりからのものを言う。
つまり、その前からあったといわれるのが『古ベルヌ体系』で、現存しているものは3種しかなく、しかもそのうち二つはどこかで外来種が混じってしまったらしい。唯一、古ベルヌ体系の中で純性を保ったのが通称<青ベルヌ>と呼ばれる砂漠の植物だ。実は昨年の野宿で偶然見つけたのがこれだった。滅多に花もつけないわりにあれこれ必要とする、どこぞの温室育ちのお嬢さんみたいな甲斐性のない花だが、植物好きを自負する身としては、青ベルヌは持ってるだけでステータスだと言いたい。(そう言ったら近所のお嬢様に馬鹿扱いされたが。)
授業で使った植物は学院温室の中でも貴重な古ベルヌ系植物、しかも純性の生葉だった。それでも、反応したというにはあまりに微弱な青だった。
<青ベルヌ>の名前の由来になった実験は今を遡る事数百年前にに初めて行われた。文献にもしっかり残っていて、教科書に載っている実験の記録と研究者の言葉を何度も読んだ覚えがある。
続く学院の実験備考には、
「古ベルヌ種はかつてこの国に存在した黒の箱気脈を清活脈に取り入れることで生存していた古代種である。黒の箱気脈消失により栄養源を失い、現存する古ベルヌ系は錯誤流脈性のものとされている。実験において貴重な緑磁石とその他8種類から作る高等反応薬に反応し、反応色は淡青色である。」
古ベルヌ種が黒の箱気脈の枯渇と共に古代種となってしまった事が書かれている。
五分後。
青い花弁が濃紺の液を滴らせながら自重に耐えられずむしれて、受け皿にしようと思っていた白い小皿に落下した。ピンセットに摘まれた一枚の半分が手の震えのせいで押しつぶされた。
その、深いあお。
黒気脈に反応しているかのようだった。
云百年も昔に消えたはずのエネルギーの流れに。
「どういう、事だ」
学院授業でベルヌ系植物の実験を行った。その時に、自宅栽培の鉢で咲いた純ベルヌ系の白い花が風喰で落ちたのが栞になって辞書にはさまれていたのを思い出したので、授業中に同様の処置をしておいた。
ここからは僕の勝手な放課後研究になる。
学院総本山の良い所は、職員の認可証一つでどの試薬品も使い放題にしてくれるところだ。地方に居たんじゃこんな贅沢はできない。富と権力の集まる王都だからこそ、渡り鳥に餌でもくれるような感覚で物資をばらまけるのだ。たとえそれが広告のパーツであるにしろ、田舎くんだりからのこのこやってきた苦学生にはありがたい事だったし、実際タダ飯と薬品臭い散財が目的で来てる学徒も相当いるんじゃないかと思う。
青緑色の反応剤を広口瓶から器へと流し入れ、さらにそこからピペットで試験管に取り分ける。授業で煮沸処置をして中に入れてある花弁と花台が浮いて、白く青く周りを映した泡と共に沈んだ。
少しだけどろりとした感のある液体はそれ自体が面倒なシロモノで、数分も大気にさらせば空気を取り込んでたちまち泡となって逆に空気中に分解されていってしまう。必要な着色剤を大急ぎで垂らし、速攻で栓をする。
五分も待てば古ベルヌ系に特有な物質だけが青く着色されているはずだ。
ベルヌ系植物には大別すると種類あって、現代のベルヌ系植物は『新ベルヌ体系植物』といって、今の位置が正式に王都とされた時あたりからのものを言う。
つまり、その前からあったといわれるのが『古ベルヌ体系』で、現存しているものは3種しかなく、しかもそのうち二つはどこかで外来種が混じってしまったらしい。唯一、古ベルヌ体系の中で純性を保ったのが通称<青ベルヌ>と呼ばれる砂漠の植物だ。実は昨年の野宿で偶然見つけたのがこれだった。滅多に花もつけないわりにあれこれ必要とする、どこぞの温室育ちのお嬢さんみたいな甲斐性のない花だが、植物好きを自負する身としては、青ベルヌは持ってるだけでステータスだと言いたい。(そう言ったら近所のお嬢様に馬鹿扱いされたが。)
授業で使った植物は学院温室の中でも貴重な古ベルヌ系植物、しかも純性の生葉だった。それでも、反応したというにはあまりに微弱な青だった。
<青ベルヌ>の名前の由来になった実験は今を遡る事数百年前にに初めて行われた。文献にもしっかり残っていて、教科書に載っている実験の記録と研究者の言葉を何度も読んだ覚えがある。
「黒き流れを身に流す草、パクマリカ地方付近沙漠産出の緑磁石に繁青色活反応を示す。常緑と濃青、即ち豊かさを表す色と也」
続く学院の実験備考には、
「古ベルヌ種はかつてこの国に存在した黒の箱気脈を清活脈に取り入れることで生存していた古代種である。黒の箱気脈消失により栄養源を失い、現存する古ベルヌ系は錯誤流脈性のものとされている。実験において貴重な緑磁石とその他8種類から作る高等反応薬に反応し、反応色は淡青色である。」
古ベルヌ種が黒の箱気脈の枯渇と共に古代種となってしまった事が書かれている。
五分後。
青い花弁が濃紺の液を滴らせながら自重に耐えられずむしれて、受け皿にしようと思っていた白い小皿に落下した。ピンセットに摘まれた一枚の半分が手の震えのせいで押しつぶされた。
その、深いあお。
黒気脈に反応しているかのようだった。
云百年も昔に消えたはずのエネルギーの流れに。
「どういう、事だ」
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己
HN:
我丞
性別:
非公開
職業:
人の話きく人
自己紹介:
人間27年生。
セクマイ道7年生くらい?
心理臨床とセクマイと発達凸凹を応援するよ!
ここにあることばと存在が、私のプロダクト。
見て、わからないことは聞いて。
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