思考社
いんふるえんす我丞の情報発信基地。
[415] [414] [413] [412] [411] [410] [409] [397] [408] [407] [406]
“物語”の力 『The Fall 落下の王国』
『The Fall 落下の王国』
珍しく、映画など見ている。思うところがあったので、少し書き出してみる。
映像美。まずはこの一言に尽きる。
世界に、こんな美しい場所があったのかと。
水に映り込む空、空色の街、まるでトリックアートのような階段。色彩。コントラスト。
全ては死に損ないの、死にたがりの男が作りだした叙事詩に過ぎない。
だが、少女はまぶたの裏に映される世界を知りたがった。
現実と虚構が混ざり、美しくも残酷な現実を持つ世界。
私は広告塔ではないから、ネタばらしをするに咎めは無い。
珍しく、映画など見ている。思うところがあったので、少し書き出してみる。
映像美。まずはこの一言に尽きる。
世界に、こんな美しい場所があったのかと。
水に映り込む空、空色の街、まるでトリックアートのような階段。色彩。コントラスト。
全ては死に損ないの、死にたがりの男が作りだした叙事詩に過ぎない。
だが、少女はまぶたの裏に映される世界を知りたがった。
現実と虚構が混ざり、美しくも残酷な現実を持つ世界。
私は広告塔ではないから、ネタばらしをするに咎めは無い。
二人は行き来する。
不思議なものが存在する世界と、理解しがたいものに溢れたこの世界を。
しかしその隠れ蓑の裏で下半身不随となり恋人を失った男は、少女を利用して服毒自殺を図っていた。
ハラハラドキドキの物語は薬品室からモルヒネを持ってこさせるためのエサだ。
そうして、
幻の世界は、誰も報われない結末のまま登場人物を誰もかれも殺して終わろうとしていた。
しかし少女には、そんなことは許せなかった。
物語の中の誰もかれもが悲しいまま、報われないまま死んで行ってしまうのがいやだった。主人公が死んでしまうのも嫌だった。
だから、少女は男の物語に参加していった。
そして男は、まったく予想もしなかったミスで服毒自殺に失敗する。
否応なしに物語は語られ続ける。
延々と、報いなど微塵もない筋立てだった。
それが男が経験して来た記憶の再構成であり、少女が見てきた現実への解釈だったから。
これは私事だが、物語を書いていると、現実の思いもよらない事件で結末や、大事な選択肢がまるきり変わってしまう事がある。それ即ち、自分の抱く幻想世界が現実の鏡であることに他ならない。
それでも少女は、「死なせないで」「なぜあの人は死んでしまったの?」と泣きながら男の物語に付き添う。
少女は男が自分の持ってきたモルヒネで死のうとしていたことなど理解できない。死の存在を知ってはいても、モルヒネが何をもたらすかの知識はない。
少女はただ物語の続きを聞きたいばかりに男の言う事を聞いて、薬を持ってきただけなのだ。
少女の動機は、最後までそれだけだった。
ただ、物語の語り手である男に死んでほしくなかった。
彼女には、結末が幸せになるとか、このままいったら不幸になるとか、だから物語を聞かないという考えはない。
もちろん、男が物語に自分の人生を織り込んでいることも知らない。
純粋とはこういうことをいうのだろう。
最後のさいご、物語の主人公は少女に救われる。
「死なせないで」と懇願されて男は、死の淵から主人公を呼び戻した。
こうして、報われないまま終わるはずだった物語は書きかえられた。
物語が書きかえられる、というアクシデントは一体なにによって起こされたのか?彼に何が起きたのか。
あるいは、物語の書き変えは何をもたらすのか。
服毒自殺を図ったこの男の場合はどうか。男の現実には、少女という新たなファクターが参入し、番狂わせが生じた。そして少女が物語へと干渉する=男の人生そのものに干渉したことで、男は当初予定していた結末を変えられてしまった。
少女が男に向けて必死になって語りかけた「死なせないで」という懇願や応援は、物語の中の主人公、つまり、現実の男に向けて放たれたものであったから。
このように、その人が反映された“物語”の書き変えは、現実にも影響を与える。
映画において描かれた「物語の書き変え」はまさしく、ナラティブ(語り)・アプローチであると思う。ナラティブ・アプローチを二行で説明すると、臨床心理の現場において問題を抱えた人に提案する、問題との関わり方の一種だといえる。この過程においてクライアントは、今まで経験して来た事(古いストーリー)を、本人によって見つけられた例外や、彼を支えたいと思う人の再発見によって新たな物語へと語り直す経験をする。
臨床心理の現場では現実の自分についての語り直しが行われる。それだけではなく映画のように、自分が反映された物語の語り直し、書き変えを行う事もまた現実の自分に干渉する力を持つといえるのではなかろうか。
PR
この記事にコメントする
← さちあれ HOME 一緒に何かしよう、と言ってみる →
ブログ内検索
暦
03 | 2025/04 | 05 |
S | M | T | W | T | F | S |
---|---|---|---|---|---|---|
1 | 2 | 3 | 4 | 5 | ||
6 | 7 | 8 | 9 | 10 | 11 | 12 |
13 | 14 | 15 | 16 | 17 | 18 | 19 |
20 | 21 | 22 | 23 | 24 | 25 | 26 |
27 | 28 | 29 | 30 |
己
HN:
我丞
性別:
非公開
職業:
人の話きく人
自己紹介:
人間27年生。
セクマイ道7年生くらい?
心理臨床とセクマイと発達凸凹を応援するよ!
ここにあることばと存在が、私のプロダクト。
見て、わからないことは聞いて。
セクマイ道7年生くらい?
心理臨床とセクマイと発達凸凹を応援するよ!
ここにあることばと存在が、私のプロダクト。
見て、わからないことは聞いて。
項
新
(10/30)
(08/02)
(07/28)
(07/26)
(04/16)
カウンター
Tamariba