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2024/05/10 (Fri)

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―if―  『戦争』にリアリティーを “母の悲しみ”

2010/02/16 (Tue)



「いってきます!」
元気よくランドセルを跳ねて、娘はドアを開け、出て行った。
足音がアパートの階段を降りるまで、根気よく待ってしまう。やっと1階の駐輪場へ見えた小さな身体に、出来るだけ大きく手を振った。こちらを向いて笑っている、あの笑顔が今夜どうなってしまうか考える。
「いってらっしゃい」
それ以上何も口にできなかった。


今朝も、お弁当箱に余りのハンバーグを詰めながら、口元に緊張を覚えた。
ついに、この日が来てしまった。
いまこの時、同じ時間、同じ思いで朝食やお弁当の支度をしている親が一体どれほどいるだろう。
そうした新聞の投書欄を読んだのは、数日前のことだった。


“平和のために義務を果たして”

我が子は2度目の参戦です。今朝、嫌がる子供を叱りつけ最後には「平和のため」と言い含め、親二人泣きながら見送りました。
自分が代われるものなら代わりたい。当然です。何が起こるか予想もつかない戦地へ、進んで子供を送り込む親はいないでしょう。
見送りの言葉が「お国のため」でない事、そして生きて帰ってくる事だけが、昔の親との違いです。


子供たちが実際の戦闘に参加する事はないし、外国から逃れてきた語り部の講演会に出るのでもない。日本国が最後に体験した戦争、第二次世界大戦からとうに200年は経っている今の時代、戦中・戦後世代はおろか、被テロ世代でさえ少ない。
一般人において、直接的な争いの体験は失われたと聞いている。

けれど今、国民の3分の1は戦争の記憶を持っている。
脳への刺激によって“戦争を経験する”機械が開発された。それが8年前。
1年としないうちにプログラムが始まった。
それも、子供優先で。
発表のすぐ後、ネットで教育担当大臣の会見があった。
理由は「未来を担うべき存在」だから。
当時は、誰もが信じられないと言っていた。
2度目には泣いて嫌がるという“参戦”。
一体どうしたらそんな事が出来るのかしら。
でも現に、そういうプログラムが動いている。
国民すべてに義務づけられたプログラムが。
“反戦意識”効果も出ているのだそうだ。

きっと本当の事だろう。
そっと頷く。


ひとり戻ったアパートのキッチンで、朝食の皿を水に浸し小さな茶碗を見つめた。
あの子はどうしているだろうか、と。
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